小ネタ 2008-003

「W-SIMフリークス」
 〜 W-SIM(PHSコアモジュール)の解析や応用回路製作 - その2


- W-SIM機器開発は個人で可能か -

 W-SIM機器開発は個人で可能かというのを以前2006年に調べている。

 前回の結論は、
 (1) 公式に問い合わせた結果は、「個人で開発しても構わないが、公式な技術試験を受けた機器でないとウィルコムの回線に接続するのは駄目」。
 (2) DDやnico.を分解して調査した結果は、回路的に困難なのは音声コーデックの部分だけで、あとは個人でも部品を揃えれば作れそう。
 (3) W-SIMのATコマンドの解析が必要。
 ということだった。

 その後、自分の中で上記(1)の「接続が駄目」というのが気持ち的な足かせになっていて、解析や回路製作(Phreaking)がストップしていた。

 最近、各所で開発が進んでいるようなので、それらを情報収集して、自分でも再開してみたい。(2008-02-10)


 ちなみに上記(3)のATコマンドについても解析が進んでいるようだ。
 W-SIM(osdev-j) http://wiki.osdev.info/?W-SIM
 W-SIM/ATコマンド(osdev-j) http://wiki.osdev.info/index.php?W-SIM%2FAT%A5%B3%A5%DE%A5%F3%A5%C9



データ通信端末の開発 … 実例を探してみる

実例を探してみた。
いくつか実例がある。DDをデータ通信端末と呼べるかどうか疑問だが、DDのような回路は簡単に作ることができる。

(1)市販PHS-Ethernetアダプタの改造例
 CQ出版の月刊誌「インターフェース」誌 2007年8月、9月、11月号に、「PHS経由でネットに接続できるEthernetアダプタのファームウェアをハック」という記事が出ている。

(2)W-ZERO3[es]をLinuxZaurus化した例 (まだW-SIMを使うのはできてないらしい)
 W-ZERO3 Linux http://w-zero3.org/?%A5%C0%A5%A6%A5%F3%A5%ED%A1%BC%A5%C9%2FLinux

(3)ZaurusにW-SIMを接続した例
 ZaurusにW-SIMをつないでみる http://www.asuka.cx/zaurus/W-SIM/

(4)BluetoothにW-SIMを接続した例
 Bluetoothで WILLCOM W-SIMを使う実験 http://yuki-lab.jp/hw/wsim-bt/

(5)iPod touchにW-SIMを接続した例
 iPod touch に W-SIM を接続してみた http://novi.10.dtiblog.com/blog-entry-215.html

自分でも手始めにW-SIMとPCとをRS-232Cで接続するためのアダプタを作ってみている(2007年)。W-SIMは白ロム状態のものを使っており、ウィルコムの回線には接続していない。
 


I-Oデータ USB-WSIMの中身を調べてみた。(2008-5-11) W-SIMとPCとを接続するためのアダプタである。
  
 中身は、以前に調べたDD(WS002IN)の中身と一緒でPL2303XというUSB-UART変換ICを使っている。
 DDにはW-SIMのバスの保護用にバッファICの74LS245が入っていたが、USB-WSIMには入っていない。

 DDを購入したときは、電話機本体としてW-SIMとセットでしか買えなかった。今回のUSB-WSIMは単体でW-SIMに関係なく購入できる。

 今まで自分は、「ウィルコムはDDのような回路でも電話機として扱っているので、勝手にDDのような"電話機"を作るのは問題がある」と思っていた。

 しかし、I-OデータのUSB-WSIMの場合には"電話機"では無いようだ。この2つの差異は何なのだろうか? 2つの製品の間に決定的な差異は無いように見える。
 製品の問題ではなく、当時はDDは"電話機"とする判断の基準があったのだが、現在はこの判断基準が変更されたのかもしれない。
 DDのような回路は"電話機"ではないという判断のほうが妥当だと思う。




音声端末の開発 … 実例を探してみる

1つ実例が出ている。凄い。

・W-SIM音声端末を自作
 W-SIM(マイコン工作実験日記) http://blog.goo.ne.jp/sirius506/e/1a5b96439d123ae21ec3abb1913eefc1

 音声CODECは、沖電気のML7041を使っているとのこと。



非公式の自作端末でウィルコムの回線に接続する際の問題点

 上記の例では非公式の自作端末でウィルコムの回線に接続しているようにみえる。

 W-SIMの応用工作は電波法的には問題ないので、W-SIMの内部を改造しない限りは電波法違反(違法)とはならないだろう。

 回線に接続するのは、ウィルコムにとって以下のような事情で歓迎しないと思われる。
 ・公式な手続きをせずに、技術面や金銭面で負担なしに第3者が勝手にウィルコムの回線網を利用して"タダ乗り"するのは、ルール違反。
 ・特に音声端末は、音声品質が一定の基準を満たすかどうか厳密にチェックが必要で、勝手に低品質の音声通話をされると困る。

 以上のような事情を無視してしま荒らし的なことをした場合は、どうなるだろうか?
 ・実際には、ウィルコムの回線に非公式の自作端末で接続しても、おそらくウィルコム側は検知できないので、見つからないか?
 ・ちゃんとウィルコムに回線代を払っている限り金銭的にはウィルコムには損害がないし、"タダ乗り"端末を売ったりしなければ業務妨害というほどでも無いので訴訟ざたにはならないか?
 ・「ルール違反」に対してどんなペナルティがあるのか不明。契約強制解除とか再契約不可能になるのか?

 (後日加筆 2008-02-11)
 ・「ルール違反」と言っても、そもそも自作端末をウィルコム回線に接続しては駄目というルールは一般ユーザーに対して提示されていないので、一般ユーザーが守る義務は無さそう?

 ・例え話をすると脱線するかもしれないが、「Friio(フリーオ)」という地上デジタル放送の映像信号をコピーガードなしでPCに記録できる装置が最近問題になっているのと似ているかもしれない。法的には問題ないし、技術的にも容易に実現できることだが、地デジのシマ(商権)を守っている側からすれば当然歓迎しないだろう。実験的に試作品を作ってみるレベルでは大きな問題にならなかったようだが、販売が開始され問題化している。


 ・いまのところW-SIM自作端末は結論の出ないグレーゾーンだと思う。おおっぴらに非公式の勝手端末を売ったりしなければ問題化することもないので、当分はグレーのままだろうと思う。




USBでPCと接続するアダプタ回路を自作してみる

USB-UARTとW-SIMを接続してみた。(2008-03-31)
StrawberryLinuxというところで売っているFT232RLのキットを使った。
W-SIMは白ロム状態のもので試した。ATコマンドが通ることは確認できた。ウィルコムの回線には接続していない。
 

写真右下は、音声コーデックのMSM7732という沖電気のICである。まだICを基板にくっつけただけで、未配線。
音声コーデックとして当初はW-ZERO3の分解記事を参考にWolfsonのICの入手を画策していたが入手できず、nico.を自分で分解してMSM7732が使われていることが分かったので、MSM7732の入手先をずっと探していた。(入手できなかったら、nico.の基板から取り外すつもりだった)

すでにW-SIM音声端末を作っちゃった人は、沖電気のML7041を使っていた。ML7041の方が安いし、制御がi2cバスなのでマイコンにつなぎ易いとのこと。

MSM7732の制御信号は、FT232RLのGPIO端子に接続して制御しようと考えている。FT232RLは、シリアル通信以外に汎用I/O機能が付いているので今回の用途に使うことができるように思える。


(後日加筆 2008-06-28)
OKIの半導体部門は、分社化してROHMに売却されるようだ。今後はMSM7732とかML7041はROHMから買えるのかなあ。



(後日加筆 2008-08-15)
音声コーデックMSM7732をFT232RLのGPIO端子に接続して制御するのを試してみた。
FT232RLにはシリアルポートの信号線と、4本の汎用の信号線があり、この4本は設定を切り替えることで、ラインモニタLEDに使ったりGPIOに使うことができる。GPIOに設定して、MSM7732に接続した。
MSM7732は、動作させるために2.048MHzのクロックと3.0Vの電源が必要である。水晶と74AC04を使って2.048MHzの発振回路を作ったが、最初はうまく発振せずに抵抗を入れたりして調整した。74HCU04とかを使う方がよいのかもしれない。電源は3.3Vが定格内なのでそのまま接続した。


まず手始めに、MSM7732に内蔵されたアナログスイッチの制御を試してみた。
FT232RLのGPIOを使ってMSM7732の制御レジスタに値を書き込んで、内蔵のアナログスイッチのOn/Offをさせてみた。ちゃんとOn/Offすることが確認できた。
とりあえずMSM7732の制御レジスタを制御するところまでは作成できたようだ。

MSM7732のPCMデジタル音声の信号線はまだ未接続なので、これをW-SIMに接続して、音声のアナログ出力がちゃんとでるかどうか試してみたい。




W-SIMの動作記録を取るための回路を自作してみる

 以前に作っていたW-SIM中継器の中間部分からシリアルの通信線のTXDとRXDとGNDの3本の配線を取り出して、FT2232CというUSB-UARTのICを使ったキットに接続した。(2008-05-25)
 FT2232は1つのICで2ポートのシリアルポートを使うことができるので、1つのポートでジャケットホンからW-SIMへの送信データをモニターし、もう1つのポートでW-SIMからジャケットホンへの送信データをモニターすることができる。

 




つづく